Trinityのがぶ飲みブログ

横浜市青葉区新石川、東急田園都市線たまプラーザ駅にある隠れ家的なワインバー“Trinity Wine Lounge & Cafe”です。  ここでは、日々の出来事やワインに関する情報を紹介していきます。  

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悲報

本当に久しぶりのブログ更新となってしまいました。
そんな気分になれなかったというのが本音ですが…。

3月の初め、私と私のお店の常連さん達にとって大変悲しい事件がありました。
その事件は3月9日の朝日新聞の朝刊に第一報が報じられ、その後新聞各社、テレビのニュース番組でも取り上げられたようです。

以下、朝日新聞ニュースサイトより抜粋・原文ママ


作家・駒沢敏器さん遺体で発見 横浜、首に絞められた跡

8日午後8時ごろ、横浜市青葉区新石川4丁目のマンション4階の一室で、この部屋に住む作家、駒沢敏器(としき)さん(51)が死亡しているのを神奈川県警青葉署員が見つけた。
首に絞められた痕があり、同署は殺人事件とみて捜査を始めた。
同署によると、同日午後7時半ごろ、駒沢さんの母親(81)から「息子を殺した」という趣旨の手紙が入った小包が届いたと、新潟県内の親族から通報があった。
署員が現場に向かうと、無施錠のマンション室内で駒沢さんが倒れて死亡していた。
首に絞められた痕があったほか、絞めるのに使ったとみられるネクタイも落ちており、室内にも母親の名前で書き置きがあったという


駒沢さんは、うちのお店が2007年の11月にオープンした直後から通っていただいていた常連中の常連で、ここ2~3年は週に2度3度は欠かさずお見えになっていた方でした。
作家という仕事柄ご自宅に籠って執筆された後、1日の締めくくりにうちのお店にワインを飲みに来る、という感じで、そのうちカウンターで隣り合わせた他のお客様同士でも仲良くなり、共通の趣味の方とDVDの貸し借りをしたり、昨年の春はお客様のご自宅に集まってみんなでお花見をしたり、という事もありました。

私自身は、駒沢さんを知るお客さまからのメールで事件を知りました。大変ショックを受け、彼の名前で検索して少しでも詳しく載っているニュースサイトは無いかと、あちこち見て廻りましたが、残念ながら上記の事以上は分りませんでした。しかし、各社のニュース記事に載っていない、大変重要な事実があります。

それは駒沢さんが、昨年末から原因不明の病気を患っていたということです。

昨年の11月半ばから、それまで週に2,3回というペースで飲みに来ていた駒沢さんが、ぱったりとお見えにならなくなりました。普段から仕事のための取材で国内外を動き回ることの多い方でしたから「おそらく取材か何かで忙しいんだろう」と思っていました。

年明けの1月半ば、駒沢さんと彼の友人がワインを飲みながら仕事の打ち合わせをするとのことで、年が明けて初めて(およそ2カ月ぶりに)うちのお店に来た時、駒沢さんの様子は以前とは明らかに変わっていました。平均的な身長に細身の体格はそのままでしたが、体を斜めに傾け、ビッコを引くような歩き方で一目見て具合が良くないということが分ります。

心配になって声をかけると「神経の病気らしくて、あちこち痺れてうまく動かないんだ。痛みはないんだけど…」

その後、2週間余りの間に2度、お見えになりましたが、身体の調子は悪いままのようで、以前はカウンターで楽しくいろんな話をしていた彼でしたが、物思いに耽るように、じっと黙ったままグラスを傾けるようになりました。
しかも、病気のせいでよく眠れていないのか、カウンターに座ったままウトウトと眠ってしまっていました。

まさに「人が変ってしまった」という感じでした。

普段の彼ならば、飲みすぎる前に勘定を済ませ、スッと席を立つことが出来る人でしたので「よほど具合が良くないんだろう…。でも、うちの店の居心地が良くて、立ち去り難い何かがあるなら、とことん付き合おう」
そう思って、敢えて起こしたりすることはしませんでした。(その時間にはもう他のお客さんもすっかり引き上げていました)

しかし、私と駒沢さんの間に何の会話もなく、黙々と時間だけが過ぎていき、時折自分のグラスに手を伸ばすものの、「飲む」というより「舐める」様な程度でお酒そのものもあまり進まないようでした。そのうち朝に近い時間になってしまいました。

このままではかえって体に良くないと思い直し、「大丈夫ですか?今日はもう家でゆっくり休んだ方がイイですよ」と声をかけました。
すると、彼はまるで今まで時間の感覚を無くしていたかのようにハッと顔をあげ、「そうだね。そうしよう」とゆっくり立ち上がりました。
「寒いからタクシーで帰って下さい。すぐ呼びますから」というと「いや、タクシーは要らない」とはっきりと言われ、電話の受話器を置きましたが、コートを羽織ろうとしてもうまく袖に腕が通らない様子を見て、私はとても不安な気持ちになりました。

「近いから歩いて帰れるよ」と片足を引きずるようにトボトボと歩き出した駒沢さんの後姿を見送りました。それが彼を見た最期でした。

うちの店で駒沢さんの姿を見掛けなくなったと、常連さん同士でも話題になり始めました。しかし、私が彼の事を他のお客さんに言いふらすような事は嫌なので、「最近、駒沢さんに会わないけどどうしてる?」と聞いてきた方だけに、これまでの話をするようにしていました。
いずれ彼が(すっかり元通りとまではいかなくても)健康を取り戻し、自分の口から話をするだろうと信じたかったからです。

しかし、その機会は永遠に失われました。9日の朝、前述のお客様からもらったメールを見た時、ショックを受けたのと同時に、何処かに「やはり…」という思いが混ざり合った切ない気持ちになりました。すぐにニュースサイトを一巡し内容を確認し、妻には「駒沢さん、亡くなったって…」とつとめて冷静に話したつもりでしたが、本当はその場で泣き出しそうな気持ちでいっぱいでした。

駒沢さんの事件を取り上げたニュースサイトの中で、後発のものの中には「足が不自由な息子が不憫で…」というお母様のメモの内容や、彼が年老いた女性(この人が駒沢さんのお母様と思われます)に、肩を借りながら自宅近くを歩く姿を目撃したという、隣人の話がありました。

お母様のメモの内容通り、彼女の判断で自ら自分の息子を手に掛けたのか、あるいは彼が病気によってこれから訪れる未来に絶望して死を望み、それを自分の母親に頼んだのか、真実は誰にも分りません。
それを解明すること自体も、もはや無意味に思えますし、駒沢母子の決断を私たち第3者が責めることは出来ません。

残念ながら、事件はまだ終わっていません。自分の息子の首を絞めたというお母様の行方はまだ分かっていないからです。
お母様が親戚に宛てた手紙の中に「息子の葬儀を取り仕切って、父親のお墓に埋葬してあげて欲しい」そして「自分もお父さんの所へ行きます」という内容の記述があったそうです。だとすると、お母様はもうこの世にいないのかも知れません。

そのような悲しい結末になってしまっても、駒沢さん母子が今でも深い愛情で結ばれていると信じたいと思います。

思い返すと、駒沢さんがうちのお店へ通ってくれていた事は、私にとって大事なプライドでした。決して毎日忙しくなる店ではありませんが、週に何度も、時にはほぼ毎日のように、飽きることなく通ってもらえるという事は、私の仕事へのこの上ない評価だからです。

私はまだ悲しい気持ちを拭い去ることは出来ていませんが、駒沢さんはいま、病気の苦しみから解放されて、安らかな場所にいると信じています。
そして、願わくば一日も早くお母様の行方が分かって、親子3人が一つ所に集える日が来ますように。

心よりご冥福をお祈り申し上げますとともに、残された御親戚と多くの御友人の皆様にお悔やみを申し上げます。
そして、この記事で、うちのお店を気に入ってくださった駒沢さんにお礼と感謝の気持ちを伝えられたらと思っています。
http://trinity-wine.jp/
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